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そして不幸が連鎖するように、幸運な出来事というのも立て続けに起こるらしい。
「そうそう紅葉。お母さんね、この前の再婚のお話、受けようと思ってるの」
夕食時の食卓で、お母さんがそんな事を言い出したのは、つい先日の事だった。
「え…そうなの?」
というかいつの間に。
だいたい、この前っていったいどれの話だ。
貴女、親戚から送られてくるお見合い写真の山に悪戦苦闘してませんでしたっけ?
ウチの母は、娘の私から見てもなかなかの美人なのだ。
もう四十歳とは思えないほど若々しく、二十後半と言っても本気で誤魔化せるくらいに。
だから相手には困らないのだろうけど。
「そうなのよ~。相手の男性の方が……かなり若いお兄さんなんだけどね?すっごく良い人だったの。爽やか系で、顔も上の上。で、『こんなオバサンでいいのかしら?』って聞いたら、『貴女でなくては駄目なんです!』なんて本気で叫ぶんだもの。お母さん、久々にドキドキしちゃったわ~」
頬に両手を当てクネクネするお母さん。
…いや、いくら美人でも流石に気色悪いので止めなさい。
「ねぇねぇ、『さいこん』ってなに~?」
と。
今までの会話を全く理解していない様子の隆が、口元をケチャップまみれにして尋ねてきた。
私はティッシュでそれをぬぐい取りながら、とりあえず簡潔に『新しいお父さんができるってことよ』と説明してあげた。
うん、我ながら実に分かり易い。
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