月と夜の鎮魂歌(オープニング)

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 その頃薫は…… Opening Side Kaoru 夢の中の邂逅(かいこう)  その頃薫は夢を見ていた。3人の仲間と共に魔獣と戦う夢。それは夢と片付けるにはあまりにもリアルな映像だった。薫は槍をかまえる。とほぼ同時に魔獣は灼熱の火炎を吐き、薫の体の半分を焼き付くした。 「馬鹿な、この炎は……!」  仲間の一人が叫ぶ。 「ここまで来てしまったなら仕方がない……時間を稼ぐ! うぉぉぉぉぉぉぉ!」  近くにいた巨漢の男が気合いを入れ、身を盾に魔獣に特攻した。そのわずかな隙に、後ろにいた巫女は小さな奇跡で魔獣に封印を施していく。最後に後ろで機をうかがっていた侍が巨漢の男を踏み台にし、魔獣の頭部に刀を突き立てた。魔獣は叫び声を上げながら地面に沈んでいった。しかし、薫を含め、身を盾にしてみんなを守った巨漢の男も小さな奇跡を使った巫女も死んでしまった。残った侍も再起不能の状態だった……そこで、視界がブラックアウトした。  次に目の前に現れたのは過去の自分。薫はまず、パッと右手を上げてみた。向こう側の自分も右手を上げる。次に拳を突き付けてみた。すると拳が帰ってきた。 「そうか、例の前世の自分というヤツだな」  そんなやり取りを繰り返した後に薫はやっと口を開いた。 「そういうお前も俺と同じ魂から派生した割にはずいぶんはっちゃけてるな……」  前世の自分がそう答える。 「そりゃきっとアンタのせいだ」
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