第一夜 そぼ降る雨にうたれて

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異形の手から逃れて、出来上がった穴から夜空へ飛び立つ。穴から物欲しそうに覗いている腐人に光弾を食らわせて、彩女は一つため息をついた。しかし、休む暇も彼女には与えられない。すぐに彼女は背後から迫る凄まじい殺気に気づく。   「!!」   振り向くと、そこには無数の飛妖の群れが飛び回っていた。彩女を喰らわんと耳障りな叫び声をあげている。そんな飛妖たちに彩女が光弾を向けた、その時であった。 群れの一角が、巨大な「なにか」によってまるごと消失した。彩女の目にはその「なにか」が巨大な口を持つ黒い物体として映っていた。だが、彩女がその正体を知るのは数秒後である。 残った飛妖を喰らい尽くし、咀嚼した黒い怪物は目の前で激しくのた打ち、やがて妖しい笑みを浮かべた少女の姿に変わる。外見は十七歳くらい。彩女とそう変わらない年齢だと思われる少女で、漆黒のドレスを纏い、同じく闇色の長い髪を束ねたポニーテールが風に揺れている。   「初めまして、神楽 彩女様。今夜は良い夜でございますわね」   天よりそぼ降る雨の中、二人の少女は対峙した。
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