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三節
都市上空に飛妖たちの血しぶきが舞う。娘の放つ光弾に怪物たちが飲み込まれ、見る間にその数を減らしていった。数多の異形の群れが、たった一人の少女に翻弄されている。
「赤い月……やはり柱は崩れてしまったようだな」
娘は襲いかかる飛妖の大群を意図もたやすくあしらいながら思考を巡らせた。
眼前に浮かぶあの赤い月が、異形の住まう幽世の世界の侵攻を無言で物語っていた。異質な風貌の怪物たち。赤く染まった夜の空……全てが幽世の侵食を意味する。娘は注意深く辺りを見回した。異変が起こったということは、この辺りに娘の探す物があるはずなのだ。窓から見上げた夜空にかいま見た、星屑の欠片が。
程なくして、妖気を放つ光を娘は建物の残骸の中に見つけた。群がる飛妖を光弾で消滅させて道を開き、光の元に降り立つ。
「まずは一つ目だ」
光をすくい上げて娘はつぶやいた。娘の手の上で、光は小さな石の欠片に変わる。その欠片を透明なケースに納めて、大事に懐にしまい込んだ。
「忌夢の柱の欠片……早く集めなければ……」
そうして娘が振り返ったその時だった。空から巨大な炎の塊が降り注いだのは。
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