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玄関には制服を着て学校に行く準備万端といった感じのの浅倉が立っていた。
彼は優華の姿を確認すると心配そうな表情になった。
「おはよう。遠藤さん。大丈夫!?」
「ありがとう、大丈夫だよ。浅倉君。フィルムまで取り返してくれて」
恐怖のためか、屈辱のためか、優華は上手く声を出せなかった。
「お礼なんて。たまたまここを通りかかっただけ。すごい悲鳴が聞こえてびっくりして立ち止まったら、昨日の三年がここから出てきたからなんとなく悲鳴の理由がわかって捕まえたんだ」
「本当に……」
ありがとう。
続く言葉はドアフォンに遮られた。ドアの前にいる影はおそらく和也だ。
そういえば昨日、朝早く学校行こうとか言ってたっけ。
優華は昨日の約束を思い出し、この状況を一体どうすればよい方向に転ばせることができるのかを考えた。
「彼氏?」
浅倉が口を開く。
「たぶん……」
つかの間の沈黙。
「そうか」
浅倉はそういうと同時に玄関のドアをあけた。
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