揺れる想い

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「大丈夫だった!?」  部屋の外で待っていた美香が駆け足で私に近づいてきた。 「大丈夫だよ。何にもされなかったから」 「そう!?にしても山崎の奴追い出さなくてもいいのに!」  ぷぅっと膨れた美香の顔はいつにもまして可愛い。  優華は素直にそう思った。  また、何があったのか聞かないでいてくれる、そういう気遣いも優華にとってとてもありがたかった。  もし私が男だったら絶対美香を好きになるだろうな。  優華はそんなことを考えながら、部活があるという美香に別れを告げ、正門の近くにある大きな桜の木の下へ向かった。  桜の木の下に和也は立っていた。  桜はとうに枯れもう葉桜になっているというのに和也が近くに立つだけで、優華にはその場がいっそう華やかに見える。 「遅れてごめん」 「いいよ。さぁ帰ろう」  和也はそういうとゆっくりと歩き出した。  放課後用事があるからちょっと待っててくれる?  昼休み、珍しく部活が休みとなった和也に優華がそういうと、ただ頷くのみだっため優華はてっきり怒っているのだと思っていたわけだが……。 「どうした?」 「ううん、なんでもない」  それは優華の取り越し苦労に終わった。  その後はいつもどおり他愛の無い会話をしながら帰路に着いた。
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