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準備を終えた優華が外に出ると、そこにはすでに浅倉が待っていた。
「さて。どこに行きたい?どこでもいいよ」
優しく微笑んで浅倉は優華に尋ねる。
しばらく優華は考えたが、特に行くとこもなかったため、喫茶店にでも行こうよ、と答えた。
浅倉は無言で歩きだし、優華はその半歩後ろをついていく。
「ねぇ?」
沈黙に堪えきれず、優華は少し遠慮がちに口を開いた。
「何?」
浅倉は依然として前を向いたままである。
「どうして急に出かけようなんて言い出したの?」
「あぁ、それはただ僕が、普通の男子高校生として君に会ってみようかと思ったからさ」
浅倉は立ち止まり振り向き、寂しそうに笑う。
「この前の事で僕は思ったんだ。いつ僕がこの世界から消えても、君の心に少しでも僕との思い出が残っていてくれたら…、ってね。叶わない夢なんだけれども」
浅倉は、再び前を向いて歩きだした。優華はそれについていく。
何を言ってるの?どんな事があってもあなたを忘れるなんてことあり得ないわ。
そう思いながら。
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