怪奇の本領

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「利奈ちゃん、もし君が自殺をするとき、わざわざ指輪を外したりする?」 「いやしないけど…、たまたま取ってたっていうのもあるじゃない。」 「まあそれも一理あるかな。でも肝心なことは、ここには水を汲める物が残されていないと言うことなんだ。外に置くにしても、ずぶ濡れのままで動くなんてそうそうやろうとは思わない。だったらもっと楽な死に方を選ぶはずだよ。」 「確かに…。」 利奈が言い負かされる。そして今度は舞が口を開く。 「じゃあ今度は密室の説明してよ。どうやって犯人はこの密室を作ったの?」 「それはさっきも言っただろ?鍵はこの指輪だって。指輪が自然に被害者の指から落ちたならその近くになければいけない。そして彼女にプレゼントされた物なら、大抵 は左手の薬指につけるはず。しかし今回は少し離れた窓側に落ちていた。ということは犯人が使った可能性が高くなる訳だ。」 俺はなんでクロの頭がこう考えられるのかを知りたい…。さらにクロは続ける。 「おそらく犯人は、指輪にピアノ線かなにか細くて丈夫な糸をくくりつけて、窓の外から鍵に引っ掛けるようにして引っ張った。鍵が閉まった後、糸だけ回収してしまえば密室の出来上がりさ。意外と簡単だから、なんならやってみるかい?」にわかに信じがたいけど、もしそれが本当ならクロもすごい。俺には絶対たどり着けない結論だ。   「じゃあ犯人は誰なんですか?」 秀二が核心をつく。 「犯人は…、まだ断定はできないけど、多分いつも一緒にいる残りの4人の中にいるはずだ。このトリックをやる大前提として、最初に被害者と一緒にここへ入れたこと。それも被害者が自分からね。つまり親しい人にしかできない仕掛けなんだ。」 「よし!あいつらをここに集めよう!」 自分の友達を殺すなんて…。この犯人は狂ってる。絶対に捕まえてやるからな!
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