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それにしても、今夜は寒い。カップ麺ひとつの不健康な夕食を終えると、私は片付けもせずにこたつに潜り込んだ。
こたつから頭だけ出して、ぼんやりとテレビを眺める。似たり寄ったりなクリスマス特番に飽きてテレビを消し、何気無く部屋を見回すと、大きなトトロが目に入った。今年の夏、私の誕生日に浩一さんがくれたものだ。
━━「あっ、トトロ…!すごい可愛い!すごいおっきい!」
「なつめが気に入りそうだと思って」
「はい!ありがとうございますっ…!」
「どういたしまして」
「…浩一さんってトトロに似てますね」
「…トトロ?喜んでいいのかよくわかんねぇけど」
「いいじゃないですかトトロ。おっきいしなんだか可愛いし頼もしいし」
「…そっか」━━
涙が、こぼれた。
優しい笑顔が、柔らかな低い声が、抱き締めてくれるぬくもりが、鮮やかに蘇ってくる。
私は子供だ。浩一さんに甘えてばかりで、我儘ばかりで。全然、何も分かってなかった。
自分の幼さが悔しかった。そのくせ、浩一さんに触れたかった。甘えたかった。
会いたい。
浩一さんに会いたい。
会って、謝りたい。
私はわあわあ声をあげて、子供みたいに泣き続けた。想いが溢れて、止まらなかった。
どれだけ泣いていたのだろう。
突然、玄関のチャイムが鳴った。こんな顔で出られるはずもなく、私は居留守を使おうとした。が、今夜の来客はなかなかしつこく、何度もチャイムを鳴らしてくる。
諦めて出ようと立ち上がり、ふと時計に目を遣った。11時13分。こんな時間に何の用だろう。まさか変質者…!私は片手に護身用の催涙スプレーを握り、恐る恐るドアを開けた。
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