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メリークリスマス。
びくっ。
突然聞こえた声に、女の子は肩を震わせ、顔を上げました。
「メリークリスマス」
声の主は繰り返しました。女の子の前には、見知らぬ男が立っています。がっしりした体つきの、若い男でした。
「誰?」
「サンタクロース」
男は答えました。
「クリスマスだからね」
プレゼント、何がいい?
男はそう言うとにこっ、と微笑みました。
女の子は、子供の頃絵本で見たサンタクロースを思い浮かべました。そして目の前の男と比べてみました。どういうわけだか全く似ていません。
目の前の男には長い白髭もなければ、プレゼントの袋も持っていません。お供のトナカイもいないようです。服だけは女の子の記憶の中のそれと似ていましたが、
「なんで…茶色?」
「俺赤ってあんま好きじゃないんだよねー」
俺には似合わないし。そう言った男の服は赤ではなく、カフェオレのような柔らかな茶色でした。
「そんなことよりさ、」
男が言いました。女の子が疑うような眼で自分をみていることは、あまり気にしていないようです。
「プレゼント、何がほしい?」
モノじゃなくてもいいよ、温泉旅行とか世界一周とかさ、何かして欲しいこととかでもいいし。男はそこまで一気に話すと、さっと帽子を取り、胸元に当ててにこっ、と笑いました。
「お嬢さん、ご注文は?」
なんでもしてくれる?女の子が尋ねました。もちろんなんでもしてあげる。男は答えました。
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