情け

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時折思う。自分の情けなさを。彼女の凄さを。彼女はきっと凄い人物であろう。あたしなんかには手が届かないところにいる。浮遊している。字のまんまにだ。ふわふわ楽しそうに浮かんでいる。彼女の辛さはあたしには分からない。苦労も感情も。だからあたしの感情もきっと彼女には分からない。分かっちゃたまらない。辛さを分かち合い同情してもらうなんてものは得たいとも思ってない。ただ側にいて悔しい。自分の無力さを実感させられる。 「人と比べるな。自分には自分の良いところ。個性がある。」 そんな事をよく聞く。確かにそうだ。みんなそれぞれ個性がある。でもあたしはその自分の個性が分からなかった。あたしが持っているものはなんだろう?突然何だか分からないけど大きな恐怖に襲われた。あたしのこの今を奪ったら一体何が残るのだろう。そう思った。今までそんな先の事は考えもしなかった。実感しなかったし遠くのものだった。それが一気にあたしに襲いかかって来た。 彼女と一緒にいると色々と悩まされてしまう。うなされる。奥深く考えてしまう。 そう考えないようにするためにもあたしは彼女に特別な感情を抱く事なく普通に振る舞って来た。 くれぐれも心の奥深くに居るもう一人の残酷な自分を引き出さない様に。 涙が出る程悔しい。泣くなんて最悪だ。どんなに悔しくても泣くなんてだめだ。泣いたって変化はない。誰か助けてくれるわけでもない。泣いたら彼女に完璧に負けた事になる。既に負けているのにそれを表に表現してはいけないのだ。どんなに悔しくても悔しかったら泣いちゃだめなんだ。
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