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どんな生き方をしてきたのだろう。
どんな声をしていたのか。
そんなことを考えながら、処置を終えた。
患者と家族を霊安室まで案内したいが、場所が分からないことに亜矢子は気付いた。
病室からナースステーションをのぞくと、岩田は申し送りの最中であった。
師長が亜矢子に気付いて、病室へ来た。
亜矢子
「霊安室まで案内したいんですけれど」
師長
「一緒に行きましょう」
師長は家族に挨拶した後、患者を乗せたストレッチャーをゆっくりと動かした。
エレベーターを利用し、霊安室へ移動した。
葬儀屋が来るまで、家族は患者とここで過ごしてもらう。
師長が最後まで残り対応するということで、亜矢子は先に病棟へ戻った。
亜矢子は、涙のない家族だったなと思いながら。
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