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「祐樹」
絞り出した声は、掠れて、相手に届く前に消滅する。それでも、吐き出した息が、狭い部室の床に、落ちるように響いた。
「浜ちゃん?」
祐樹が顔を上げる。なんの躊躇いもなく、ユニフォームを脱ぎ捨てる。心臓が軋む。
まだ夏の名残を残した、綺麗な背中に肩甲骨が浮き上がる。滑らかな肌色が、甘いにおいを放ち、誘う。身体の奥深くに流れる赤いものが、動き出す。
「なに固まってんだよ、早く着替えて、マック行こうぜ。ここ、さみいよ」
祐樹が、茶色の髪を掻き上げる。猫毛が祐樹の細い指に絡み付く。無理矢理、引っ張ろうとするその指に、手を伸ばしていた。
絡まり、小さな結び目を作る祐樹の柔らかい髪を解いてやる。頭一つ分下から、祐樹が無防備に笑う。色素の薄い目が、今にも切れそうな部室の蛍光灯を滲ませる。
「もう、限界」
「は?」
祐樹の肩に手を載せる。背後のロッカーに軽く押し付ける。あっと、祐樹の声があがる。両腕を冷たいロッカーにつけ、祐樹を閉じ込めた。
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