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僕の名前は、ジェームズ。
まず、僕の事を少し話しておいた方がいいだろうね。
そうすれば、きっと、僕がどうしてまた、あの国へ行こうと思ったのか。
いや、行かなければならないか、分かってもらえると思うから。
僕があの国へ住み着いたのは、僕がまだほんの赤ん坊だった頃、他の子供と同じ理由。
産まれて七日目に、ケンジントン公園を散歩中に乳母車から落っこちたんだ。
もちろん、這い上がろうとしたんだけど上手く行かなかった。
まだ、ハイハイも出来なかったんだから仕方ないんだけど、それでも頑張った事は僕の名誉の為にも是非言っておきたい。
乳母やママは、おしゃべりに夢中で僕に起こった一大事にまったく気がついて無かった。
ひどいと思わないかい?
自分の子供より、くだらないおしゃべりの方が大切だなんて。
僕の事なんか、忘れたかのようにあっという間にどこかへ行ってしまった。
僕が最初に味わった感情は、絶望だったんだ。
頭の仲がグルグルして、なにも考えられなかったよ。
結果としては、それが良かったのかもしれないな。
気がつくと、僕の周りを通り過ぎる沢山の気配に気がついたんだ。
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