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チンッ。
エレベーターが一階に着いた。
「気を付けて帰るんだよ」
「分かってる。パパも仕事頑張って。あんまり無理しないでね」
エレベータの中にいるパパに手を振り、フロントの前を通り抜け、外へ出ようとした僕は、誰かに腕を掴まれた。
「高校生が援助交際とは、感心しませんね」
耳に心地の良いバリトン。
だけど内容は最悪だった。
「そんな事してません。それよりも腕放してよ」
振り向いて男の顔を見た僕は、思わず息を飲んだ。
180㎝以上はありそうな長身に、見るからに高級そうなスーツ。何よりも、男の僕が見惚れてしまう美貌。
だけど決して女顔ではない。
男らしい精悍な顔立ち。
「ですが、エレベーターの所でお金を受け取ってましたよね」
確かにその場面しか見ていなかったら、援助交際と間違われても仕方ないかも…。
本当の事を言っても、この人が信じてくれるかどうか…。
一瞬考えて、僕は自由な方の手でポケットから携帯を取り出し、パパに電話した。
「あっパパ。忙しいのにごめんね。さっきのやり取り見てた人が、援助交際してるんじゃないかって。悪いんだけど、パパ説明して」
パパに事情を話、驚いている男に携帯を渡した。
会話は小声のため、耳の悪い僕には聞こえなかった。
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