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「ごめんなさい」
またやっちゃった。悪い癖なんだよね。一つの事に集中すると周りが見えなくなるの…。
僕は恥ずかしさで顔が赤くなる。
そんな僕に気を悪くするでもなく、一条寺さんは僕の傍に来て、自分の車の所まで案内してくれ、助手席のドアを開けてくれる。
「僕は女の子じゃないのになぁ…」
運転席に周る一条寺さんを見ながら、一人ぼやく。
金曜日の夜なら、デートの1つや2つあってもおかしくない人が、いくらお詫びとはいえ、男の僕が相手で大丈夫なのかな?
「何を考えているんですか?」
びっくりした。
いつの間に乗ってきたんだろう?っていうか、既に駐車場じゃないし…。
いきなり声をかけられたのもそうたけど、車が動き出した事に気が付かなかった自分にも驚いた。
本日2回目の自己嫌悪。
本当に僕って、周りが見えてないよなぁー。
「何を考えていたんですか?」
さっきとは違い、優しいけれど有無を言わさない口調。
「金曜日の夜だから、一条寺さんだったら、デートの1つや2つあったんじゃないかなって」
隠すような事でもないので、僕は正直に打ち明けた。
「残念ながら、今はそんな相手はいませんよ」
全然残念がっているようには聞こえないけど…。
「悠貴はどうなんですか?」
逆に返されてしまった。もしかして墓穴掘ったのかな?
まぁいいや。
「そんな相手いないですよ。共学ならもしかしたら、ですけど。男子高だから」
「そうですか」
気のせいかな?一条寺さんの機嫌が悪くなったような…。
「ちなみに学校は、どちらですか?」
「桜華です」
それっきり車の中はしんとしてしまった。
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