序章

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<5> 漸く落ち着いた紗香に、祐介は言った。 「さぁ、ほんならケーキでも切るか。ナイフかなんかあんのんか?」 鼻を啜りながら、紗香はキッチンを指差す。 祐介が立ち上がった時、紗香の携帯が鳴った。 「もしもし」 「あ、店長?お疲れ様です、佐伯です」 電話の相手は、紗香の店の従業員、佐伯遥だった。 遥は、紗香の休日に店を任せられるだけの実力を持っている。 今日が紗香の誕生日である事を知る彼女は、昨日の職場でこんな事を言っていた。 『どんなトラブルがあっても、明日は店長無しで切り抜けてみせます』 若いのに、良くやってくれている。 紗香は、佐伯遥に全幅の信頼をおいていた。 そんな彼女が電話を掛けてくるのだから、よほどの事があったのかも知れない。 「どうしたの?何かあった?」 「別に電話する程の事じゃないかも知れないんですけど、ちょっと気になる事があったもので」 会話しながら祐介を見ると、彼はキッチンでジェスチャーを送っていた。 『ナイフどこにあんねん!』 というような内容に見える。 『ちょっと待って』 という動作で返し、紗香は遥に言葉を返す。 「佐伯さんちょっとだけ待っててくれる?」 そう言い置いて、紗香は携帯の送話口を押さえてキッチンに目を戻した。 仏頂面で佇む祐介。それを見て少し吹き出してしまう紗香。 「何笑とんねん!」 「そこの引出しの中に無かった?」 「無いから聞いとんねん!」 「じゃあ包丁でいいよ」 アメリカ人の様に両手を拡げる祐介から目を逸らし、再び携帯を握り直す紗香。 「ごめんごめん。で?何があったの?」 「店長、ソウル・イーターって御存じですか?」 「ソウル・イーター?」
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