第一章

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中から出て来た女性は、雑居ビルに入居している他の会社のOLと思われた。 腰に手を当て、もう片方の手で腹をさする現場をもろに目撃され、間嶋はうろたえる。 女性は、一瞬の間を置いて吹き出し、軽く会釈をして間嶋のそばを通り抜けて行く。 間嶋は、耳まで真っ赤にしながらエレベーターに乗り込み、三階のボタンを押した。 顔から火が出る思いになりながらも、 『さっきの娘、なかなか可愛かったなぁ。あの制服、何処の会社だろ?』 等と考える辺りが、間嶋の人物像を語る材料になるやも知れない。 間嶋は、顔の火照りを懸命に鎮めながら、新庄の事務所のドアホンを押すタイミングを見計らっていた。 平成十六年、五月の陽射しは、普段より強かった。
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