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つい先程、間嶋は『都市伝説』に関するホームページを覗いていた。
そこにはしっかりと、
『ソウル・イーター』
に関する記述が為されている。
勿論、その内容は魔物の黒い描写と、人間の魂を喰らうといった特徴、さらに、何処から取って付けたかが怪しいエピソードばかりであった。
要するに、今回の一連の事件に関する記述では無い、という事である。
この都市伝説の出所は、小林紗香と西島祐介である。
『ソウル・イーター』というキーワードを、世間一般に広めるという行為により、計画遂行への『保険』を掛けていたのだ。
無論、水野博之や柿沢和弥はそれによって被害に遭っている。
間嶋は、『人間の悪意』という名の『魔物』に対し、改めて背筋を震わせた。
「それにしても」
早坂が、急に語調を改めて、口を開いた。
「人と人との出会いってのは、不思議なもんだな」
そういえば、江田島尚志も似た様な事を言っていた。
自分と坂口麻里亜との出会いに、意味はあったのか、と。
あの時、新庄が江田島に言った言葉が、再び彼の口から告げられた。
「意味の無い出会いなんて無いさ。人はそれぞれ、関わり合って生きて行く動物だ。その出会いが、良きにしろ悪しきにしろ、な。その出会いを浅く流すか、深く刻み込むかの選択肢は、人間それぞれが持っている。それさえ間違えなければ、全ての出会いは意味を成すんだ。…まあ、それが難しいんだけどな」
間嶋は、口では文句を言ってはいるが、新庄との出会いを財産であると感じている。
しかし、新庄が言う選択を間違えた時、人の心に『悪意』という名の『魔物』が入り込んで来るのかも知れない。
如何に彫るか。
如何に埋めるか。
間嶋には、答えの出し難い命題だった。
取り敢えずは、目の前で煙草を吹かす、アフロヘアの妙な男との関係は、さらに彫り進めてみようとは思っている。
どうやら彼は、この鬘がお気に入りになったらしい。
そして新庄は、リビングの大型テレビの上に置いた貯金箱に、五百円玉を一枚入れた。
どうやらそれは、今回の事件報酬の様である。
新庄は断ったらしいが、國村綾子がどうしても払いたいと申し出たらしい。
その時、リビングに三枝優花が姿を現わした。
「うわ、けっむ!先生、また調子に乗ってる!」
新庄は慌ててアフロヘアを剥ぎ取り、それを小脇に抱えて、ベランダへと退散した。
<了>
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