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「二人ともコーヒーでいい?」
キッチンに立った優花は、彼等に声を掛けた。
男二人がそれぞれ肯定の意思を示すと、優花は馴れた手つきでサイフォンを用意し始める。
彼女が淹れるコーヒーは旨い。同じ器材と同じ豆を使っているにも拘らず、件の男二人が淹れると、彼女の淹れた味に近付きもしない。
よって、この事務所でのサイフォンは、優花以外の者は近寄らない事になっている。
やがて、2杯のコーヒーと2杯の烏龍茶をシルバーに載せて、優花と國村綾子が応接セットまで移動してきた。
それに併せて、間嶋は新庄側のソファへと場所を移る。
「國村綾子さん、でしたね」
新庄が口を開いた。
「は、はい」
綾子は、緊張した面持ちでそれに応える。
「何か僕に相談したい事があるとか」
「はい」
そう言って、綾子は下を向く。何かを逡巡するかの様に下唇を噛み締め、膝の上の両手は、固く握り締められていた。
彼女の次の言葉を待つ間、間嶋は綾子の容姿を観察した。
優花と同じ高校に通う同級生という事だから、学年は二年生。16、もしくは17歳か。
彼女らの立ち姿を思い返してみる。
身長152cmの優花よりも、若干背が高く見えた。とすると、155cm位だろうか。
幼さの残る顔立ちの優花に比べて、綾子の容姿は大人びて見える。
その時、綾子が意を決したように、顔を上げた。
「新庄先生は、ソウル・イーターという言葉を聞いた事がありますか?」
新庄が、眉根に皺を寄せて、首を横に降る。
間嶋自身も、初めて耳にする言葉だった。
我々の反応は、彼女の予想を裏切らないものだったらしい。
一度大きく息を吐くと、國村綾子はゆっくりと語り始めた。
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