白い扇子

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  此方、薬を売り 旅をする男あり。 此方、扇子で顔を隠す霊媒師の男あり。 二者集いし、一軒の宿。 静寂と沈黙を守る一部屋に、 冷たい風が吹き抜ける――― 「何故 顔を隠されているんで?」 口を開いたのは薬売りの男 視線の先には扇子をもった柳幻映斉 「い…意味などない」 何か焦っている様子 一向に目を合わせようとしない姿に 薬売りは問い掛ける 「なにか…用事でも?」 応えは直ぐに返ってきた 「よ…用事?…そんなものはない…」 じゃあ何をそんなに焦っているのか 聞いてみても 同じような答えしか返ってこない 「焦ってなどいない」 「喋ってはくれませんか」 そう言いながら幻映斉に近づく薬売り 「なっ…何故 近づく」 「意味など…ありませんよ」 「……」 更に口を開かなくなった幻映斉 薬売りは 扇子で口元をずっと隠している方の腕に手を掛け、無理矢理外させた 「隠されていては 話ができません よ」 振り解こうとするが 薬売りの力が強すぎて動けない 「は…放せ」 何を言っても放してくれそうにない 薬売りの淡麗で整った顔立ちを間近で見ていると 引き込まれそうになる 薬売りは その様子を見て微笑んでいた 「幻映斉殿」 [白い扇子]              赤い顔を隠すために 前より頑張りましたっ! これからも読んでくれると嬉しいですv
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