青い羽織

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      一つの路 其の路を歩くは二人の男 静かに流れる水音に 髪を揺らす小さな風 「何処まで行くんだ」 問い掛ける先は薬売り 何も喋らずに黙々と足を進める薬売りに 男は我慢ができず 口を開いた その瞬間 薬売りは足を止める 「…何処かへ」 薬売りの曖昧な返事に 男はもう一度問う 「決まっていないのか?」 その質問には 直ぐに応えた 「ええ、薬売り ですから。決まってなど いません よ」 言って微笑む薬売り 男は納得したのか、口を閉ざした そして再び歩き出す それから随分経ったあと 薬売りは 急に足を止めた 「どうかしたのか?」 「いえねぇ…鼻緒が 切れちまいやして」 薬売りは しゃがみ、下駄を直そうとする 「結構ドジな事もするんだな。ほら」 そう言って 男は布を差し出した 「今は これで結んでおけ。町についたら新しいものを買えばいい」 薬売りは 布を受け取り微笑んだ 「これは有り難い。 結構 顔に似合わない事も するんです ね」 男は その言葉に少し腹立たしさを感じたが、薬売りの笑顔に 文句を言う気さえ無くなった 「小田島様…結んで くれませんか ね」 「そ…そのくらい自分でしたらどうだ」 薬売りは面白そうに笑う 町まで 後少し…… [青い羽織] 小さな気遣い END
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