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「果たしてそうかな」 「あん?」 老医師はまっすぐ俺を見つめる。 「これはかなり古くから実用されてる技術なんじゃ、例えば指紋」 「…指紋?」 「そう指紋じゃ。指紋は指先の皮膚にある汗腺の開口部が隆起した線によりできる紋様を云う。人や指ごとに紋様はすべて異なり変わることがない、たとえ一卵性双生児であろうと合致しない。DNA鑑定と比べてもより確度の高い鑑定が可能なのが指紋じゃ。 その歴史は古く1880年イギリス人のヘンリー・フォールズ (Henry Faulds) が科学雑誌ネイチャーに論文を発表したのが、指紋研究の嚆矢といわれる。彼は日本人が拇印を利用し個人の同一性確認を行っている事に興味をもったとも、1877年にモース博士により発見された大森貝塚から出土した数千年前の土器に付着した古代人の指紋が現代人のものと変わらない事に感銘をうけ指紋の研究を始めたともいわれている」 指紋の起源が日本にあったとは知らなかった。 「他にも声紋や筆跡鑑定がある。ただし声紋は健康状態によって認識率が低下することがあるし筆跡なぞは似せようと思えば似せ得る。だから必ずしも確実な方法とはいえん」 老医師は煙管から煙を吐きだした。
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