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塀のうえを通る三毛猫を見かけた俺は歯食いしばっていーっとする。 嫌いってわけじゃないけど生意気きでお高くとまってる猫は心からウェルカムって気にならない。 猫は一瞬なんだこいつといった表情で立ち止まるけどすぐに塀の向こうへと消える。 生意気な探偵の姿が脳裏をよぎった。 机の向かいに座ってた姉ちゃんが両手でカップ持ってココア飲みながら、どうしたのと訊ねる。 「別に」 と俺。 「あんた何しに来たん?」 「わかってるしょ」 「全然わからんし」 「会社辞めた姉を心配して様子見に来たんだよ」 「何それ」 「ホントだって」 「なんか嘘っぽい」 「嘘じゃないって」 「ホントに?」 「ホントだって。てゆうか、こっちは心配して来てんだからさ」 「あはは」 「あははじゃねーって」 「ごめんごめん」 と姉ちゃんは云う。
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