月の下 ウソが2つ。

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「待ったかな?ゴメン、忙しくて」 ヤツが口を開いた。 私より10センチ以上、上にあるその顔を見上げると、笑っていた。 ただ、いつものでは無い。 挑戦するような目付き。 「待ったかな?」って、アタリマエだろ。 一発、言ってやりたかったが、生憎。 今、言うべき言葉はそんなコトじゃない。 そう。 言わなきゃ、ね。 「―――センセ、分かってますから。もう、いいですよ」 私のこの言葉は、多分、起爆装置だった。 ―――タイムリミット。 「そ。やっぱり、気付いたか」 そう言った。 そして、ヤツから笑顔は消えた。 私達は、気付いたんだ。 お互いの、「ウソ」に。
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