誕生

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  ピ――――――――――― ガチャ 超音波のようにかん高い機械音と、腕や足に絡まるように繋がっていた数本のコードの切断音が聞こえた。 これがわたしの機動音。 わたしの視界は緑色であった。 それはこの色の液体が入っているカプセルに、包まれているからであろう。 内側から押すとカプセルは開き、外に出ることができた。 床に広がった液体のせいで、歩くたびに、ピチャピチャという不規則な音が部屋に反響する。 この部屋は殺風景なので、わたしは何の障害にも遭わず、スムーズに出ることができた。 部屋の扉をひらくと、白い廊下へ出た。 わたしはあらかじめ設定されていた初期機動通りに、何の迷いもなくある部屋へ一直線に進んだ。 わたしはヒトに造られたヒトガタ―… すなわち、アンドロイドである。 左胸に手をあてれば、そこはモーターの規則的な回転音が伝わって聴こえる。 あてたその手は、ゴム整の弾力があるが、体温はない。  
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