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今度こそ現実逃避を、と思って思考を絶とうとしたのだが、どうやら、現実は歩を逃すつもりはないらしい。
こんこんと、ドアが叩かれ、
「新藤さーん、幸せを恵みに来ましたー! まずは出てきてお話をしましょー!」
ハンコ下さい的なやたら軽いノリで、誰とも知れぬ者がドア越しに声をかけてきた。
新手の取り立て業者なのかな、と歩は思った。今度の声は、どこか舌足らずな少女のものだった。少女を雇って声をかけさせ、油断して出てきたところを捕まえようとする手口を想像する。ない、とは言い切れなかった。
言っている言葉は宗教の勧誘じみて怪しさ満点だし、なおさら出ないことに決めた。
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