第二章

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 今度こそ現実逃避を、と思って思考を絶とうとしたのだが、どうやら、現実は歩を逃すつもりはないらしい。  こんこんと、ドアが叩かれ、 「新藤さーん、幸せを恵みに来ましたー! まずは出てきてお話をしましょー!」  ハンコ下さい的なやたら軽いノリで、誰とも知れぬ者がドア越しに声をかけてきた。  新手の取り立て業者なのかな、と歩は思った。今度の声は、どこか舌足らずな少女のものだった。少女を雇って声をかけさせ、油断して出てきたところを捕まえようとする手口を想像する。ない、とは言い切れなかった。  言っている言葉は宗教の勧誘じみて怪しさ満点だし、なおさら出ないことに決めた。
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