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その建物のロビー正面、受付窓口。
純白の翼を持つ天使の女性は、受付業務を担当してちょうど八年を数える今日この日、初めての事態を迎えて困惑していた。
受付業務の一つに、天使職採用試験申し込み手続きがある。受付の女性のもとに提出されたのは、まさにその天使職採用試験申込書であり、きちんと不備なく記入事項が書き込まれてあったのだが。
「えっと……見たところ、あなた悪魔よね?」
申込書を提出した来訪者は、額の上の左右に二本の小さな角を生やし、背中には蝙蝠のそれを模したかのような黒翼を持った少女だった。外見的特長から推するに、十代半ば程度の悪魔の少女だろう。書類の種族の欄にも、しっかりと『悪魔』と書いてあるし。
「はい! カグヤは悪魔です!」
覇気よく少女が答える。本人の肯定も得たことで、少女が悪魔であるということは、いよいよ疑う余地もなくなった。
だとすると、少女は悪魔でありながら、本気で『天使』という職業に就こうしているのだろう。天使職採用試験申込書を提出するということは、そういうことだ。
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