第一章

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 職業の一つである以上、選ぶ権利は雇用側ではなく、仕事を求める側にある。天使に生まれ、天使として相応しい性質を持っているからといって天使職に就く必要はなく、他の仕事に就いても別段、問題はない。だから、少女が望むように、なりたければ悪魔が天使職に就くことだってできる。天使採用試験を受け、適性さえ認められればの話だが。  それにしたって、少女のような存在は非常に珍しい。勤続八年の女性をもってして、初めての事態である程度には。  悪魔に生まれたからには、悪魔の性質を備えているのだから、天使職に向かないのは当然で、それは得て不得手、向き不向きなどとは、次元が違う。性質とは先天的な要素であり、性格とはまったくの別物で、変わり様などあるはずもない。  報酬に見合った労働をこなさなければ仕事として成立しないのだから、悪魔が天使職に就こうと努力することの不毛さは誰だって知っている。そういうものなのだから。
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