第二章

1/15
前へ
/53ページ
次へ

第二章

 その少年、新堂歩は不幸な境遇の真っ只中にあった。  悲劇の始まりに予告はなく、唐突で不意打ちであっという間だった。  二ヶ月前に父親が蒸発した。蒸発するのにはそれなりの理由が往々にしてあるもので、歩の父親の場合は借金から逃げ出すための蒸発だった。そうして、高校生になったばかりの歩は、母親と二人暮しになった。  隠れてギャンブルにはまっていた節のある父親が残した借金はおよそ百万円。額としてはそれほどでもないが、しかし、借りる場所が悪かった。悪徳金融業者、俗に言う『闇金融』から借りたらしく、利息は高利貸しの代名詞たる【といち】、すなわち、十日に一割増えるものだった。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

208人が本棚に入れています
本棚に追加