第二章

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 置き土産にとんでもない所から借りた借金。残された母親に借りる当てはなく、仕方がないので朝も昼も夜も働いて返すことに決めた。歩もバイトを始め、微弱ながら母親を助けたのだが、十日で一割増える借金は、百万円で計算すると一ヶ月で三十三万千円増える。  父親も逃げるわけだ。寝る間を惜しんで働いても借金は少しずつしか減らなかった。  しかも、不幸は続くもので、働き詰めだった母親がここに来て過労で倒れ、病院に搬送されてしまった。命に別状はなかったが、しばらく入院が必要とのこと。歩は、昏々と眠り続ける母親の見舞いに行き、今し方ボロアパートに帰ってきたばかりだった。  脳裏に浮かぶのは、自分一人で働いて返さなくてはいけなくなった借金のことばかり。とてもではないが返せるはずもなく、ましてや母親の入院費もある。頭が痛い所の騒ぎではなかった。
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