寒い季節には…

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    空気が冷気を含み始めた季節… 足下や指先から冷気が身体に纏わりついてくる…     「はぁ…大分、寒くなったなぁ…今夜は鍋かな?」     手に息を吹き掛けながら主婦の様な事を口走りつつ、木枯しの吹く道を歩くのは明るい茶の髪を持つ青年、名を武田佐助。     彼は、この町の高校に通っている学生である。 これから、家に帰宅し夕飯の準備をしなくてはならない。  家族は、父親変わりの武田信玄と2つ下の弟の幸村である。 佐助には、訳あって家族はいない。幼い時に信玄の養子となり、それ以来本当の家族として生活している。     「ん~何鍋にするかなぁ?」     帰り道にあるスーパーで買い物籠を片手に鍋の材料を考えながら店内を歩き回る。 その姿はまさに主夫…完璧に板に付いている。     あれこれ考えながら、歩き回っていると、精肉コーナーの前に見慣れ過ぎた人物がいた。     グレーのスーツに包まれているが、しっかりした肩幅のある長身、後ろに流された烏の濡れ羽の様な漆黒の髪、そして、常人には似つかわしくない左頬にある大きな傷跡…     「片倉先生…?」    
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