烈火

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 相澤の声は通信機を通じて、井上に聞こえていた。ただならぬものを感じた井上は、相澤に通信を行なった。 井上「どうした、相澤?」 だが、相澤からは返答がない。  井上は、もう一度問おうとしたが、レーダーに映った新たなる機影に気をとられた。 井上「敵か!」  レーダーに映ったのは、あの阿修羅王だった。もちろん、曙隊と同様に井上が驚いたのは間違いない。だが、それ以上に驚いたのは、その阿修羅王が通信回線を開いてきたことだ。 雷電「久しぶりだな、井上。まさかここで会えるとはな」  井上は驚いたが、すぐにその顔はひきつり、目を血走らせた。 怒りと憎しみのはいった声で、井上は通信を返す。 井上「北条院 雷電…」 雷電「どうやら覚えていてくれたようだな、井上」 井上「忘れはしない…。貴様があの日、私と隊長を見捨てて部隊を裏切った時から!ずっと私はお前を憎んでいた!」 雷電「いいぞ、井上。その憎しみは、いつか自分を滅ぼす。だが憎しみは、人にとってもっとも強い力となる」  雷電は楽しそうだった。いまにも高笑いをしたいかのように面白くて、何よりも目の前にいる井上の斬龍を見るだけで、"あの日"を思い出すことが出来て、とても愉快だった。 雷電「さて、残念だがお喋りはここまでだ。聞こえているか、武井。どうせアンタのことだ。斬龍隊の通信は傍受してるんだろ? いますぐに部隊を撤退させたほうがいいぞ、この要塞はもうじき自爆する。信じるか信じないかは好きにしろ。どっちにしろ、また俺はお前に会うだろうしな」
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