烈火

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 用件だけを話すと、通信はすぐに終わってしまった。雷電は、阿修羅王の警戒態勢を解き、一息つけたかのように深くシートに座りこんだ。 それから、独り言を呟く。 雷電「あの三人も限界だな…。廃棄して、新しくパイロットを組んだほうがいいかもしれん…」  雷電は軍服の胸ポケットから写真を取り出した。そこには、井上と雷電、それにもう一人、笑顔で井上の肩に手を置く20代後半の男の姿が写っていた。 雷電「いずれお前とも決着をつけねばならんな、井上」 そう言うと、雷電は写真を破いてコックピットのなかに投げ捨てた。  どうしてだろう…。 頭のなかに響く大切な人の声…。 何を言っているのかはわからないが、何故か伝わる大切な声。 いや、大切な人々たちの祈る気持ちが声として聞こえたのかもしれない。  だが、何を祈っているんだ?   何を信じているんだ?  そう考えたとき、一言の言葉が頭に浮かんだ。    『逃げて…』 ハリー「俺は…一体…?」  ハリーは自我を取り戻した。それと同時に、阿修羅王が現れたシーン、ヴァジュラパーニが撤退したシーン、撤退命令のでたシーンがフラッシュバックしてきた。 ハリー「くそっ!撤退か!」  やっとわかった。さっきの頭に響いた声といい、祈る気持ちといい、全てはこのためだったのか。 ハリー「井上!相澤!撤退だ!撤退するぞ!」  きっと二人にもハリー同様、祈りが聞こえていたのだろう。 三機の斬龍は全速力でその場を後にした。
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