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それから、脇下は富男にたいする態度が変わった。
脇下の家はとんずら団地の横の豪邸だ。
脇下の父は昆布会社を経営しており村1番の金持ちだった。
ある日の放課後、脇下は自動販売機の前でもがく富男を見つけ、声をかけた。
「よ、よう、野見!」
なぜか照れ臭くて、うまく話せなかった。
振り返った富男の顔は真っ青だった。
(ははーん、学校一モテる俺が話ばかけたから、いじめられるんでか?って思ってんだべな。)
「ちょ!助けてけれや!指さ挟まって……」
しどろもどろに話す富男に脇下は鉛筆1ダースを差し出した。
「まあ、ビビる事ないべな!これ、やっから!」
「いんやー、嬉しいけんどその前に助けてけれ!」
(野見の奴、涙ば流して喜んでんな。)
「したら、明日な!」
そう言って脇下は去っていった。
「助けてけれ~!おつりんとこさから、手が抜けねんだば~!」
泣き叫ぶ富男の声は届かなかった。
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