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廉花は朝から不機嫌だった。
「ラブレターくらい自分で渡せっつの」
「また朝井に?」
廉花は不機嫌そうに頷いた。机の上には可愛らしいピンクの封筒がちょこんと置かれている。
「あんたもつくづく紳士よねぇ~」
「し、しょうがないじゃん!あんなかわいいポーズでお願いされたら断れないんだよ」
廉花は女の子に弱い。身長もそれなりなので女子に上目遣いでかわいくお願いされると断れなくなってしまう。幼稚園の頃はいじめる男子をしょっちゅう泣かせたという伝説もある。そして美男子と噂の朝井和希と幼なじみという関係のせいかよく手紙をお願いされる。
「あんた、高校は女子校行きなよ。きっとハーレムだよ~」
「あ~それもいいかも。けどさ~、そうするとカズが女装してまで追っかけてきそうでいやなんだよな。それに青春の友情が減る!」
「そこかい!」
「誰が女装するって?」
廉花の背後でブリザードが吹き荒れた。振り向くと明らかに真っ黒な笑みを浮かべた和希が立っていた。
「面白そうな話してるね。俺も混ぜてよ」
「え…いや…その…」
「ほらよせよ。廉花ちゃん困ってるだろ~?あれ?その手紙、どうしたの?」
うまく話を逸らしてくれたのは市川隼人。
「わかった!ラブレターでしょ?遂に廉花ちゃんももらったか~。和希はしょっちゅうもらってるみたいだけど」
「や…これはあたし宛てじゃなくて…あ!」
和希はヒョイと奪って開封した。
「何勝手に開けてるんだよ!」
「レンのものは俺のもの。俺のものは俺のもの」
「なんでジャイアニズム?!」
そんな廉花の突っ込みを無視して和希はポイと封筒を落とすと中身を読む。和希の眉間に段々しわが出来る。そして読み終わり、最上級のスマイルと共に手紙を廉花の机に置いた。
「ねえレン。随分女性的な文章だね。字体も可愛らしいし」
「何が言いたいんでしょーか和希様…」
「こんな男却下」
「おい!却下ってなんだよ!中身見たから棄却だろ!」
「いや、実物に会ってないから却下だ」
「あのさー。それ、朝井宛てだよ?」
間。和希はニッコリ笑った。
「レン?なんで言わなかったのかな?」
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