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私はその男の手首を掴み上に高く掲げた。
『なっ、何をするんだ!!』
私は男を睨み付けながら言った。
『大の大人が何してんの?!痴漢なんかして恥ずかしくない訳?!』
『なっ、何を言ってるんだ!ちっ、痴漢なんて私はしていない!』
往生際の悪い男……。
こうゆう男が居るから、私は自分を守れる人間になりたいんだ。
『やってない?よくそんな事を言えるわね』
私と男が言い合いになり始めた為、それに気付き周りがコソコソとざわめき始めた。
その時、何処からか声が聞こえてきた。
『ねぇ、おじさん……もう観念したら?俺もちゃんとこの目で見てたよ?』
その声の主は今朝、目が合った金城 耀だった。
『お客さんどうなさいました?』
騒ぎに気付いた運転手が、マイクで話し掛けてきた。
『痴漢です!バス止めてもらってもいいですか?』
それを聞いてバスは急停車した。
その止まった反動でよろめき、男の腕を放してしまった。
『あッッ!!』
その隙に男はバスを降り、早々と逃げてしまった。
『ゴメン紗英……逃げられちゃった』
『ううん……有り難う可憐ちゃん!あと、金城君も有り難うね!!』
バスは何事も無かった様に、再び走り出した。
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