第14章

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『ただいまー』 『お帰りなさい』 リビングのドアからお母さんが、顔だけちょこんと出しす。 私が自分の部屋に行こうと、階段に足を掛けた時だった。 お母さんから思いもよらぬ事を聞き、その場で固まった。 『えっ?お母さん……今、何て言った?』 『だから、笙君が部屋で待ってるわよ』 『あっ……そう……』 私は重い足どりで、部屋の前まで来た。 だが、来たのは良いが身体が動かない。 笙とは、あの告白らしき事から逢っていない。 どんな顔をして逢えばいいのか分からず、ずっと逢わない様に避けていた。 稽古だって、一般の生徒さん達が終わり、誰も使わなくなった道場で一人で稽古をしていたぐらいだ。 (どうしよう……) 『何してるの?』 『わあっ!!』 突然の声に私は驚き声をあげた。 振り向くと、ジュースとお菓子をお盆に乗せて持つお母さんが立っていた。 『お母さん……ビックリさせないでよ』 ガチャ―― ドアが開く音が背後から聞こえる。 私は振り向く事が出来ずに、緊張で身体が支配された。 .
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