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『はい、お菓子とジュース』
そう言ってお母さんは私にお盆を手渡す。
『笙君ゆっくりしていってね』
お母さんはニッコリ笑い、下へと降りて行った。
私はお盆を持ったまま、まるで石になったように動けない。
『お帰り。入らないの?』
『はっ入るよ!!』
私は戸惑いながらも、やっと自分の部屋に入った。
取り敢えず、お盆をテーブルに置き、鞄を机の脇に置いた。
その間、視線を感じ、私は笙を見る事も、顔を上げる事も出来ない。
『座らないの?』
『すっ座るよ!!』
クスッと笙が笑う。
『何が可笑しいの?!』
『さっきから緊張しまくり』
『!!』
笙が余りにも余裕たっぷりで腹が立った。
『で、何の用?』
(ヤバイ……)
私は聞いた後に、後悔をした。
今、一番触れてはいけない事なのに、自ら墓穴を掘ってしまった。
『誰かさんがずっと俺を避けてるみたいだから、逢いに来た』
そう言って、笙は私を真っ直ぐ見た。
私は金縛りにあった様に、身動きが取れなくなってしまった。
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