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仕事の話しをする耀は、口では嫌だと言っていても、楽しそうにみえた。
『可憐ちゃんおはよう』
耀が一方的に話している時に、紗英が軽く手を挙げながら歩いて来た。
『おはよう』
私も軽く手を挙げながら応える。
『今日も暑いね』
手を顔の前でパタパタさせながら紗英が言う。
『だね』
私は苦笑いしながら空を見た。
9月半ば、夏の陽射しが私達を照り付ける。
『あの……』
耀が申し訳ない程度に、私達の会話に割って入ってきた。
『あっ、居たの?』
紗英の容赦ない一言に耀はまた、シュンと落ち込む。
その時バスが着き、私達は乗り込んだ。
バスの中は、通勤通学の人達で満員でぎゅうぎゅう詰めで、私達は何とか逸れずに一カ所に留まる事が出来た。
『……って言うか、ウザイ』
紗英が突然ポツリと呟く。
原因は分かっている。
……耀だ。
バスに乗って暫くしたと言うのに、まだ肩を落としシュンとしている。
『確かにウザイね……』
私は業とらしく、大きな溜息を一つ吐く。
ウザイと思いつつも、耀の落ち込む姿はやはり仔犬に見えて可愛く感じるのもまた事実だった。
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