第15章

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《羽山 可憐様 今日の放課後、屋上にてお待ちしております。 誰にも言わずに、一人で来て下さい。》 手紙にはそう書かれていた。 差出人は書かれていない。だが、私にはこの手紙の差出人が誰なのか、ある程度の予測が出来ていた。 私は便箋を再び封筒へと戻し、今度は鞄の中へと仕舞う。 (屋上ねぇ……) 『可憐ちゃん、さっきの手紙何だったの?』 教科書などを仕舞い終わった紗英が、私の前の席に座りながら聞いてきた。 『やっぱ、熱烈なラブレターだった』 『ねぇ、誰から?』 楽しそうに紗英が聞く。 『名前無し。だから、今日は先に帰ってて』 『えー!邪魔しないから隠れて見てていい?』 紗英は目を輝かせながら、私に聞いてきた。 『紗英……いい訳ないでしょ』 私は溜息混じりに答えた。 「ケチっ」とブツブツ文句を言いながら紗英はふて腐れている。 紗英を巻き込む事は出来ない。 それに、誰にも言わずに一人でと書いてあった。 きっと、誰にも邪魔をされたくないのだろう。 ――ガラッ 戸の開く音と共に担任が教室に入る。 紗英は「後でね」と言って自分の席へと戻った。 .
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