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私は「ありがとう」と言って、自分の席に戻る紗英を見送った。
作戦はこうだ……。
紗英が帰る時に、私の下駄箱に紗英の上履きを仕舞い、私の靴を紗英の下駄箱に入れる。
うちの学校は下駄箱に蓋が付いている。
耀がもし、私が学校に居るか確認しても、これで帰ったと思うはずだ。
紗英の言う通り、ここまでしなくてもいいのかもしれない。
でも、耀には……耀にだけは知られてはいけない……。
放課後、紗英に「お願いね」と言い、鞄を片手に私は屋上へと向かった。
階段を上り、冷たく重い鉄のドアの前に着く。
私は小さく深呼吸をし、ドアノブに手を掛け、ゆっくりとドアを押し開けた。
陽射しが丁度、真正面で私は手を額の所まで上げ目を細める。
『誰にも言わずに、一人で来たみたいね』
『そう書いてあったからね』
声のする方へと視線を移すと、予想通りの二人が私の正面へと歩いて来た。
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