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少年は、少女を伴って、歩く。
少女は、少年の後について、進む。
どこまでも暗い空の中。
「全く…君も、良い加減あきらめて、乗り換えろよ。
僕みたいな、わがままで自己中心的で好きな娘の願い事も叶えない嫌な奴に、
いつまでもついてまわってないで。」
少年は、言う。
幼い子に言い聞かせる様に。
少女は、答えず、微笑む。
「僕と付き合う位なら、他のやつの所へ行けば良いのに。
解り切ったことだろ。」
もはや半分独り言のように言う少年に向けて、少女は口を開く。
「良いの。私は、キミに名前を呼んで貰いたいだけだから」「嫌だ」「お願い」「嫌」「名前」
いつまでも続く様に思われた問答で、先に折れたのは少年だった。
「…君が、その方が幸せだと言うのなら。」
「有り難う。」
そう言う少女の顔には、今までに見たこともない様な、100パーセントの笑顔があった。
少女の名が、呼ばれる。
少女は、笑う。
頬を、一筋の涙が伝う。
少女の唇が動く。
有り難う。ごめんね。
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