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周囲に吸血鬼の気配があった。ルードは、また先を越されたか…と思った。しかしそこにいたのは、真っ白な翼を持った、見たこともない種の吸血鬼だった。それも、珍しい雌の吸血鬼だ。
「なんだ…お前は」
ルードは白い吸血鬼に声をかけた。
「見てわからないの?吸血鬼だよ」
ルードはその吸血鬼の言葉に驚いた。魔王にこのような言葉遣いをする吸血鬼はいない。魔界において吸血鬼は下等な生物である。魔王の存在を知らなくとも、生物学的な本能が自然に敬語を使わせるものだ。だが、その白い吸血鬼は違っていた。
「面白い奴だ。名前は何と言う?」
「なんで言わなきゃいけないの?」
「…では質問を変えよう。この辺りで天使を見なかったか?」
「見てない」
「そうか。流れ星がこのあたりに落ちたと思うのだが」
「知らないよ」
「…そうか」
ルードはその吸血鬼から離れ、天使を探すことにした。だが、飛び上がろうとした時に、吸血鬼はこう言った。
「その流れ星は、私だよ」
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