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何だか無性に誰かに会いたい。
貴方以外の誰でもいい。女でも男でも構わない。
シナプスは音を発てて切れる。
こんな事ならあたしは暖かくなくていい。
今から冷たくなっても構わない。
名前を呼ばれるとハッとする。そうだよ、あたしの名前はそれだ。
相づちは打つ、一応。
『うん』
『うん』
頭の中にはシナプスの音しか聞こえない。
掻き毟りたくなる。
何匹も蛆が集ってるみたく、あたしの頭の中を何かが這い回って、支配する。
…気付いたら最寄り駅。
誰に連絡を取ろうとしても誰にも繋がらない。
あたしがキライ?
とかじゃない。
みんな忙しい。男も女もみんな忙しい。
せっかく駅に着いたのにあたしには傘が無いよ。
こーやって足止めを食らってれば誰かに会う時間も減るの。
…誰かって誰よ。
構ってよ。構わないでよ。
あたしは我儘なんだ。
いつか付き合った馬鹿とは違う意味の我儘なんだけれど。
本当は…
…貴方に会いたいんだよ?
仕方ないので濡れて帰る。
傘を差し出してくれる筈の人は肝心なときに傘を忘れてあたしに会いにくる。
大きな水溜まりにあたしの顔は映らない。
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