加速

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何か自分が正気でいられるものが欲しかった。普通の人間である確信が欲しかった。     「リストカット」 そこに私は逃げ道を見つけてしまった。     ほら、私にも血が流れてる。ちゃんと痛い。気持ちが落ち着く。     死ぬ気なんて無い。 浅く赤い線を引く。 それだけで気分が落ち着いた。     そんなことしたら駄目だって知ってる。でもどうにもならない!!!誰にも言えない。言ったら気持ち悪いって言われて嫌われる。またイジメられる。母に嫌われたらもう生きていけない。だから黙って逃げ続けた。     高校卒業して、短大に進んでからも同じことの繰返し。     就職活動が始まった頃、行き詰まった私は、履歴書を書く手を止めた。そのままペンを手首に落とした。     大学側のミスで就職試験を受けられなくなったときだった。     ガツン!!!     鈍い音がして我にかえった。     無意識のうちに手首をひねってペンを避けていた。ペン先は手首ね皮を1mmほどえぐっただけだった。     生きたい、生きたい、生きたい!!!     皆みたいに、ちゃんと仕事して、生きていきたい!!!     涙が溢れた。
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