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空に浮かぶ無数の光の粒、その中に、大きく丸い、そして淡く蒼に輝く蒼月が光輝いている。
それらの光は窓から差し込み、わらわの体を照らす。そして体がもとにもどったと教えてくれた。
この体も久しいのう。
わらわは魔界に建つとある城の床を踏みしめ、まだ動かしにくい体を大きく伸ばす。指や背骨がパキパキと音を鳴らし、久しいわらわの体に、感覚がもどってきた。
伸びが終わると、わらわの隣に俯せに倒れている女へ目を向ける。
女は動く気配すら見せない。まあ呼吸すらしておらぬのだから当然じゃな。
仕方のないやつじゃ。迎えに行ってやろうかの。
わらわは女の腹の下に手を潜り込ませ、掬いあげるようにして持ち上げ、肩に担ぐ。
「まったく、世話のかかるやつじゃ」
わらわは声が出るか確認するため呟き、現界へと続く穴を開いた。
久しぶりの魔界を見てまわりたかったのじゃが……まあ仕方あるまい。
わらわは床に開いた大穴に、女を担いだまま飛び込んだ。
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