B子の症候群

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 ある日、親切なことで有名な白兎が大人に捕まった。そりゃそうよね、不思議の国に留まるための切符はそんなに安いものじゃないの。切符の方は気楽なものよね。「ボクを食べて!」と叫ぶだけで良いんだから。  他人にから理不尽な暴力を受けることも、親の偽善を押しつけられることも、男の好色な目に晒されることも、忌々しい流血だってないのだから。「ボクを食べてごらんよ!」。この一言を叫んでいれば誰もが認めてくれるし、受け入れてくれる。  死にたいだの、苦しいだの、ネガティヴな言葉ばかりを並べる悲劇のヒロイン気取りは、「アタシを食べて! Eat me! Schauessen mich!」なんて書いたプレートを首から下げて、夜の町にでも立たせておけば、少しは幸せなヒトビトが増えるんじゃないかしら?
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