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そう、おとぎ話ではないの。クダラナイ現実。私も「アリス」を読みすぎた。バカみたい。クダラナイと思っていたことを、自分自身がやっていた。だから自分もクダラナイ。
でも、知らない町に広がるクダラナイ日本によくある光景の方がクダラナイ。だったら、目を塞いで、耳も塞いだ方がマシだ。「クダラナイ現実よりは、クダラナイ夢を選ぶわ」。私は首がないくせに偉そうに腕を組むウサギに言い放った。
「君がクダラナイと思うことは確かにクダラナイけど、そのクダラナイ世界から逃げたところで、君はずっとクダラナイままじゃないのかな? 知ってるかい? 1989年の今日はね...」。首がないくせに、ウサギの手は偉そうなドイツ人のようにヒゲをいじる仕草をする。
「...知ってるわ。クダラナイ歴史」。私はなにもかもクダラナイと思った。1989年の歴史的な出来事がいかに素晴らしくても、今を生きるけど、今が生きづらい私にはクダラナイことでしかないの。首の無いウサギなんて、ただの毛むくじゃら。クダラナイわ。
「知ってるかい? 東ドイツの国境警備隊は、一日一本のバナナが支給されたんだよ!」。ウサギは相変わらず偉そうだ。「先生にでもなったつもり?」。私は呆れ顔で問いかける。
「あっは![Ach!]ボクはいつだってキミを導いてきたじゃないか。クダラナイことかもしれないけど」。ドイツ語めいた感嘆符をつけて、ウサギは言葉を返してよこした。
「クダラナイわ。この世界もそうだけど、アナタが一番クダラナイ...そうね、アナタの次の次くらいにクダラナイのは私かな。そう考えるとまだマシね」。そう言い放つと、少女は公園の砂場にウサギを放り投げた。周囲はもう日が落ち、遠くの方から子供たちが「バイバーイ!」という声が聞こえてきた。
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