B子の症候群

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 見慣れた診察室。見慣れた先生。見慣れた錠剤。見慣れない錠剤。もう薬は嫌だと思っても、体が言うことを利かないとき、疑心暗鬼にとらわれた時、泣く以外できない時、パニックになった時には、これらを飲まないと落ち着かないし、動くことができない。  アタシは知ってるの。精神医は薬で稼いでいるって。DSM-Ⅳみたいな、誰でも神経症にしちゃうような基準を使って、薬で飼い殺しにしちゃうのを知ってるの。『17歳のカルテ』っていう映画を観たから知ってるの。  でも投薬がないとアタシは生きていけない。不思議の国に留まれないの。きっとお母さんのせいなんだ。いえ、お父さんかもしれない。アタシの自由を押さえつけてきたヒトタチのせいで、アタシは投薬がないと不思議の国に留まることができなくなった。  ねえ先生、アタシ、チェシャ猫ともっとお話がしたいの。だからリタリンをちょうだい? ベッドから起きられないと、猫の頭を撫でに行けないじゃない? 先生だって金が必要なんでしょう? アタシの障害者年金を巻き上げるだけじゃ良心に反するから、同情でリタリンをくれるワケじゃないよね? セ~ンセ!
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